
RICOH GX200
いつも遊びに行くその場所───部室はそんなに広くない。
「室」というのはここでは、空間を指す。その空間は、
広くはないが、まわりは森だ。森はもちろん広大な森。
その為狭さを感じることはほとんどない。
「ヒト」が、僕のように(僕もヒトだけど)ここに入ることが出来た、
とするとそこは、ただの緑の広場にしか見えないだろう。
山の中にぽっかりと開けた空間、草花が縦横無尽に駆けめぐり、
かかる屋根は、見上げると首が痛くなるような高さの木の葉。
こう説明するとやっぱりここは不思議なところだ。
背の高い木の下に、こんなに草花が元気に笑っているのだから。
他には、ここがだいたいコンビニ3軒分くらいの広さなのに、
はじからはじまで歩こうが走ろうがかなり時間がかかる所と、
草花を踏んでいるようで踏んでいないところ。
どうなってんだろ。
あ、まだあるな。
「今日はどこから飛び出てくるんだろ。」
と、今では楽しみのひとつになっているこの感情。
最初は、煩わしく思っていたのに。

RICOH GR DIGITAL II
ぐるり辺りを探してみたけど、
草・花・木しか見えない空間に、小鳥の声、
風のざわめきしか聞こえてこない。
だけど確かに
「彼女」はここにいる。
「悪戯(いたずら)」を仕掛けようと息を潜ませているのだ。
ふと、目の前、
黄色い小花の咲く真ん中に、
トゲトゲ緑のモノが置かれているのに気づいた。
「あれ?さっきまでなかったよな、カッパか?」
聞くところに寄ると、カッパ達はここ90年間行方知れずらしい。
なぜ居なくなったかは、教えてもらってない。
「内緒なの。」
と、彼女達が言っている。
置いてある「トゲトゲ緑」は「ムカシキュウリ」だ。
手をささないように両手で抱えたけど、
「痛っ!!」
ムリ。
元の所にそっと戻して
まわりを見まわそうとしたその瞬間──────、
「な!?」
突然、視界が新緑に染まった。
どうやらでかい葉っぱで目をふさがれたようだ。
チリンと鈴の音、
「だーれだ?」
真上から声。
続く笑い声を合図に、
小鳥はさえずり、風は木々とお囃子(はやし)をたてる。
「やられた…。」
「また、明日もマナが鬼だよ。」
口をとがらせ頭をかいている僕の名前は「真奈人(まなと)」。
「彼女ら」からは「マナ」と呼ばれている。
ちゃんと「と」のところ、最後まで呼んで欲しいのだが。
「ってゆうか、ムリだって、見つけんの…。」
そう言っている僕の目を覆う葉を取って、
夕焼け色の巾着袋に入れながら微笑む彼女の名は、「サヲリ」。
白い髪に赤い着物を纏った、ザシキワラシだ。
ぬばたまの黒髪という表現があるけど、それと対になるような
美しく白い髪。太陽に当たると銀色に揺らめく。
そして、赤い着物には、彼女の好きな桜の花などの模様と、
金色(こんじき)の星が目映く輝いている。
帯は葉が色づき始めたころの淡い緑よりも
ちょっと薄いぐらいの色で、蝶蝶の羽のように結ばれている。
着物自体も彼女である。
そして、彼女だからその着物を着るのだろう。
背丈は小柄だ。僕の身長は173cm。一緒に並ぶと僕のお腹あたりのところに
頭がくるくらい。彼女曰く、それでも最近どんどん伸びてきているのだそうだ。
「サヲリは今日、良いことでもあった?」
くるくると僕のまわりの宙をサヲリが舞う。
「え?毎日良いことばかりだよ。」
さらに舞は喜びを奏で、
鈴の音がそれに従ってリーンリンと華やかな音をたてる。
だんだんと、
小鳥のさえずりはさらに賑やかに、
風と木々のお囃子はやさしく辺りを包み込む。
「ヒト」の僕と、
「ヒトならざる存在」の彼女。
されども仲が良い。
いや、
「されども」ではなく、「だから」に訂正しておく。
こうして今日も僕らの1日は、
放課後、
挨拶(いたずら)で始まる────────。
第2話(仮) 終わり。
第3話へつづく。
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